クーリングオフや中途解約の書類作成

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岐阜県中津川市蛭川2244-2

特定商取引法の要点

訪問販売によるトラブルを予防するために、1976年に特定商取引法の前身である訪問販売法が制定されました。(2000年に訪問販売法が特定商取引法に改称されました。)

それ以降、新たな消費者被害が生じる度に特定商取引法が改正され、消費者保護のために事業者に対する規制とクーリングオフなどの解約ルールが追加されてきました。
消費者の契約トラブルを解決するために、もっとも頼りになる法律が特定商取引法です。

特定商取引法は事業者と消費者間の契約対象とする法律であるため、事業者同士の契約には適用ができません。
また、同法の対象になるのは下記で指定された取引類型に限定されます。下記取引以外で消費者が自ら店舗を訪問して契約した取引については、クーリングオフなどの同法の消費者保護の規定は適用されません。

 

特定商取引法の対象となる取引

(1)訪問販売  
(2)通信販売 ・・・表示規制等があるが、現状ではクーリングオフ対象外。 
(3)電話勧誘販売 
(4)連鎖販売取引(マルチ商法)  
(5)特定継続的役務(エステ・学習塾・語学教室・家庭教師・パソコン教室・結婚情報サービス・美容医療サービスの7業種)  
(6)業務提供誘引販売(内職商法) 
(7)訪問購入(訪問買取)
(8)ネガティブオプション(送りつけ商法)

 

訪問販売

訪問販売には、展示販売や催眠商法(SF商法)・キャッチセールスなども含まれます。
これらの訪問販売については、以下のような事業者規制や解約ルールが規定されています。

・訪問時に勧誘目的を明示する義務。
・契約をしない意思を表示した者に対する勧誘禁止。
・申し込み書面や契約書面の交付義務。
・8日間のクーリングオフ期間。
・過量販売(通常必要とされる量を著しく超えた取引)の解除権。

 

通信販売

カタログ通販、テレビショッピング、インターネット通販サイトなどは通信販売に類型されます。
こうした通信販売は、事業者の広告を見た消費者から問い合わせや注文をする形になっているため、日本では契約に不意打ち性が無いと解釈されクーリングオフ制度は適用されません。
通信販売には、以下のような事業者規制や解約のルールが規定されています。

・広告に事業者情報や取引条件などの表示義務
(違反の罰則は規定されていないが行政処分の対象となる。)
・誇大広告などの禁止
・承諾をしていない者に対する電子メール広告の提供禁止
・契約の撤回(法定返品権)
(通信販売には消費者による8日間の契約解除の権利を認めるが、事業者が返品特約を定めて広告に表示した場合には、その表示内容が優先となる。)

 

電話勧誘販売

事業者から消費者に対して電話を使って勧誘をした場合には、電話勧誘取引として扱われます。
消費者側から電話をした場合でも、事業者がダイレクトメールやチラシなどを配布して、契約についての勧誘であることを告げずに電話をかけることを要請した場合には電話勧誘販売に該当します。
これらの電話勧誘には、以下のような事業者規制や解約のルールが規定されています。

・勧誘に先立って事業者名や勧誘目的を明示する義務。
・契約をしない意思を表示した者に対する勧誘禁止。
・申し込み書面や契約書面の交付義務。
・8日間のクーリングオフ期間。

 

連鎖販売取引(マルチ商法)

商品販売やサービスの提供を行う事業であって、販売の目的物を再販売すればリベート(報酬)が発生する仕組みを作り、その販売組織に加入するために消費者から費用を徴収する取引については、連鎖販売取引に指定されています。

連鎖販売取引とは、いわゆるマルチ商法(MLM)と呼ばれるものであり、消費者が販売組織に入会すれば、第三者に商品・サービスを販売する度に報酬が得られると勧誘を行う取引のことです。

次の4つの要件に該当すれば連鎖販売業にあたります。

(1)商品やサービスの再販売・受託販売・販売のあっせんをする者との取引
(2)販売手数料(リベート)などの報酬(特定利益)を与えることで勧誘
(3)商品・サービスの購入や入会費などの条件(特定負担)がある
(4)商品・サービスの販売にかかわる取引

この4つの要件を全て満たす取引については連鎖販売取引に該当し、以下のような事業者規制や解約のルールが規定されています。

・連鎖販売取引をする場合には、勧誘に先立って販売組織の情報や特定負担の内容などについて明示しなければならない。
・勧誘に際して、不実の告知、不利益事実の不告知、威迫・困惑行為、勧誘目的の不告知などの禁止行為をしてはならない。(違反は罰金や業務停止などの対象となる。)
・広告における取引条件の表示義務と誇大広告の禁止。
・取引の概要書面と契約書面の交付義務。
・契約書面の交付日より20日間のクーリングオフ期間。
(もしくは再販売をする商品の引渡しを受けた日より20日間のクーリングオフ期間。どちらか遅い方の日を起算日とする。)            
・クーリングオフ期間経過後の中途解約

中途解約ルール

連鎖販売取引契約を解除(販売組織を脱会)した場合には、以下の5つの条件が全て揃うケースについては、消費者が商品の販売契約も解除して返金請求をすることができます。

<条件1>販売組織への入会後1年未満 
<条件2>商品を受領して90日未満
<条件3>商品を再販売していないこと 
<条件4>商品を使用又は消費していないこと 
<条件5>商品を棄損していないこと

この5つの条件を全て満たす場合に限り、下記のように返金を請求することができます。

商品が未使用であり、その全てを返還した場合
※商品金額の10%分を違約金として差し引き、残りの90%分を返還請求できる。

商品の引渡しを受けていない場合
※法定利率による遅延損害金を違約金として差し引き、残りを返還請求できる。

商品を返還できない場合
※商品の販売金額と法定利率による遅延損害金を合算した金額を違約金として差し引き、残りを返還請求できる。

 

特定継続的役務提供

長期間継続するサービスの契約の対価を前払いをすると高額になり、その状態で事業者が破産すると消費者被害も甚大となります。
そこで、消費者被害が深刻であって個別業法などで規制がされていない7業種(エステティックサロン・語学教室・家庭教師派遣・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介サービス・美容医療サービス)については特定継続的役務に指定され、消費者保護が図られています。

 

規制対象となる特定継続的役務提供の事業

エステティックサロン
「人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと」と定義されています。
こうした事業内容で契約期間が1ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。

語学教室
「語学の教授」と定義されています。
高校や大学の入試対策としての英語教習は学習塾に分類され、英検等の資格試験の教習は語学教室に分類されます。
こうした事業内容で契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。

家庭教師・通信指導
「入学試験準備や高校等の補習のための学力の教授で、学習塾等以外の場所で提供されるもの」と定義されています。
こうした事業内容で契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。

学習塾
「入学試験準備や高校等の補習のための学力の教授で、小中学校・高校生等を対象にして、業者が用意する場所で提供されるもの」と定義されています。
こうした事業内容で契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。

パソコン教室
「電子計算機又はワードプロセッサーの操作に係る知識又は技能の教授」と定義されています。
こうした事業内容で契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。

結婚相手紹介サービス
「結婚を希望する者を対象とした異性の紹介」と定義されています。
こうした事業内容で契約期間が2ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。

美容医療サービス

 ・対象役務:
(1)脱毛 
   光の照射又は針を通じて電気を流すことによる方法
(2)にきび、しみ、そばかす、ほくろ、入れ墨その他皮膚に付着しているものの除去又は皮膚の活性化
   光若しくは音波の照射の照射、薬剤の使用又は機器を用いた刺激による方法
(3)皮膚のしわ又はたるみの症状の軽減 
   薬剤の使用又は糸の挿入による方法
(4)脂肪の減少
   光若しくは音波の照射、薬剤の使用又は機器を用いた刺激による方法
(5)歯牙の漂白
   歯牙の漂白剤の塗布による方法

こうした事業内容で契約期間が1ヶ月を超え、かつ契約金額が5万円を超える契約が対象となります。

 

特定継続的役務提供の規制と解約ルール

・契約を締結する以前には概要書面の交付が義務化。
・契約時には契約書面の交付が義務化。
・契約書面の交付から8日間のクーリングオフ期間。
・クーリングオフ期間経過後の中途解約ルール

 

中途解約の違約金の上限

  役務提供開始前の解約 役務提供開始後の解約
エステティック 2万円 提供された役務の価格と、2万円または契約残額の10%のいずれか低い額との合計
語学教室 1万5千円 提供された役務の価格と、5万円または契約残額の20%のいずれか低い額との合計
家庭教師 2万円 提供された役務の価格と、5万円または1ヶ月分の授業料相当額のいずれか低い額との合計
学習塾 1万1千円 提供された役務の価格と、2万円または1ヶ月分の授業料相当額のいずれか低い額との合計
パソコン教室 1万5千円 提供された役務の価格と、5万円または契約残額の20%のいずれか低い額との合計
結婚情報サービス 3万円 提供された役務の価格と、2万円または契約残額の20%のいずれか低い額との合計
美容医療サービス 2万円 提供された役務の価格と、5万円または契約残額の20%のいずれか低い額との合計

 

業務提供誘引販売取引(内職商法)

内職を紹介するために技能講座や商品の購入をさせる取引形態(いわゆる内職商法)は、業務提供誘引販売に指定され、以下のような事業者規制や解約のルールが規定されています。

・勧誘に先立って事業者や商品の情報、勧誘目的であることを明示する義務。 
・勧誘に際して、不実の告知、不利益事実の不告知、威迫・困惑行為などの禁止行為をしてはならない。 
・広告における取引条件の表示義務と誇大広告の禁止。
・取引の概要書面と契約書面の交付義務。
・契約書面の交付日より20日間のクーリングオフ期間。

 

訪問購入

訪問購入という取引形態への規制は、2010年以降に急増した貴金属の訪問買取(出張買取)によるトラブルに対応するものであり、従来までの特定商取引法では規制できなかった問題を改善するものです。

購入業者に対する不当な行為の規制
・事業者名および勧誘目的の明示義務。
・勧誘を希望しない者への勧誘禁止(不招請勧誘の禁止)
・勧誘を受ける意思の確認義務
・再勧誘の禁止
・勧誘等で不実告知や事実不告知の禁止
・威迫による勧誘など困惑させる行為の禁止

書面の交付義務
・物品の種類、購入価格、クーリングオフ、物品の引渡しの拒絶ができることなど、書面に記載して交付することを義務化。

クーリングオフ
・8日間のクーリングオフ期間。
・訪問購入の取引では、原則として全ての物品がクーリングオフ対象となる。
・クーリングオフ期間中は、物品の引渡しを拒絶して売主の手元に置くことが可能。
・クーリングオフ期間中に業者が第三者に物品を再販売してしまった場合には、その第三者に対して物品の所有権の主張が可能。(第三者に対する物品の所有権の対抗)
ただし、物品の引渡しを受けた第三者が事情を知らなかった場合(善意無過失)は所有権の対抗はできない。

通知義務・告知義務
・クーリングオフ期間中に第三者に物品を引き渡した場合には、売主に対して第三者への引渡しの情報を通知することを義務化。
・クーリングオフ期間中に第三者に物品を引き渡す際には、物品がクーリングオフされる可能性があることを通知することを義務化。
・売主に対して、クーリングオフ期間中は物品の引渡しの拒絶をする権利があることを告知する義務。

違反業者への措置
・業務停止命令などの行政処分。
・悪質な違法行為には、懲役や罰金の対象。

 

送りつけ商法(ネガティブオプション)

販売業者が消費者に対して、申込も契約締結も全くしていない商品を送りつけて代金を請求したり、注文以外の商品を送りつけて代金を請求する行為をネガティブオプションといいます。

このような一方的に送りつけられた商品については、それは事業者側からの購入をしてほしいという申込であると解せられ、消費者が承諾をしない限りは契約は成立しません。
そのため消費者には代金の支払い義務も生じないし、商品を返送する義務もありません。

消費者が事業者に対して商品の引取請求をしたときは、請求した日から7日を経過する日までに引取りがされなければ、事業者は商品の返還請求ができなくなり、消費者はその商品を自由に処分ができるようになります。

また、消費者が引取り請求をしなかった場合には、商品の送付があった日から14日を経過する日までに消費者が契約を承諾せず、事業者も引取りをしないときはその商品を自由に処分できます。

この期間が経過する以前に消費者が商品を使用すると、それは承諾とみなされて代金を支払わなくてはいけなくなるので注意が必要です。

平成28年の改正点

特定商取引法は消費者取引の多様化に合わせて改正が繰り返されています。
直近では平成28年5月25日に改正法が公布され、平成29年12月1日に施行されています。

その改正点は以下のとおりです。

<訪問販売>
・指定権利から特定権利への変更(2条4項)
・契約に関する事項で消費者の判断に影響を与えるものが事実不告知の行政処分対象
(7条2項3項)
・不実告知と事実不告知の取消権の時効期間延長(9条の3)
・アポイントメント・セールス(訪問販売)の適用範囲拡大

 

<通信販売>
・承諾をしていない者に対するファクシミリ広告の提供の禁止等(12条の5)

 

<電話勧誘販売>
・電話勧誘販売への過量販売解除権導入(24条の2)

 

<特定継続的役務提供>
・美容医療契約の特定継続的役務提供への追加について

 

<法執行>
・業務停止期間の延長
・行政による業務停止命令の範囲が拡大
・立ち入り検査を拒んだ場合の罰則(71条)
・禁止行為への違反や行政指導に従わない場合の罰則(73条)

 

この改正点の詳しい内容については、下記の当事務所の運営ブログで解説しております。

 

特定商取引法の平成28年改正(平成29年6月施行)のポイント|ネット行政書士・遠山桂ブログ


書類作成について

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